top of page

首藤謙二院長が『心と心のたより』に
会長あいさつを寄稿されました。

 

《発行者:西都児湯地域精神保健福祉協議会第21号 令和2年3月》

【会長あいさつ】

     

                               西都児湯地域精神保健福祉協議会 会長 首藤謙二 

 昨年4月より、中林永一前会長の後任として会長を務めさせていただいおります首藤謙二です。現在、西都病院の院長として勤務しております。以前、県立富養園に勤務していた時期もあり、西都児湯地区は私にとって非常に馴染み深い地域です。その当時富養園で診ていた患者様はその多くが統合失調症であり、初診の場合、急な発症で激しい精神症状や行動障害を伴った患者様が多かった印象があります。昨今、精神科疾患はその種類や経過、患者数において大きく様変わりしていると感じますし、統計上でもその事は明らかになっています。なかには「20世紀から21世紀にかけて統合失調症から自閉症スペクトラムへと、精神医学の主役が交代しはじめている」と述べる学者もいるほどです。疾患の種類などが様変わりしても、患者数が減ったわけでなく、精神疾患数の患者総数は420万人と増加しており、特に外来患者数の増加が目立ちます。但し、入院患者数に関しては減少傾向にあります。疾患別では統合失調症の数に大きな変化はなく、最近15年で認知症が7倍、うつ病など気分障害が1.8倍、神経症やストレス関連障害などが1.8倍、自閉症が3.5倍などと統合失調症以外で大きな変化が認められます。また精神科病院数はほぼ横ばいですが、外来患者のみを診察する精神科診療所は約4倍に増えています。これらの事から、平成を通じて精神疾患は「入院する病気」から「通院」で治療する病気に変遷していった事が示唆されます。従って、地域で暮らす患者様に対する地域社会の方々の理解と寛容な受け入れが必要になっています。


 また、近年の地域精神保健において問題となるのが、大人のひきこもりです。ひと昔前までは、就学時の不登校や一群の精神病の生活形態の表現だった引きこもりが、今やそれまで普通に社会生活していた成人の方々までが陥る危険性がある状況になっています。平成31年度の実態調査によると40歳から64歳の引きこもり状態にある方が全国で61.3万人いると推計されました。更に引きこもりの期間も5割が7年以上と長期化しているなど、中高年の引きこもりが顕在化した結果となっています。これらは、近年の少子高齢化や核家族化による家族機能低下や、地域との連携と相互扶助の喪失、社会的孤立や生活困窮といったネガティブな社会状況が背景にあると思われます。これはまた、自殺者の推移と無関係ではありません。中高年を引きこもりに至らせる要因が、中高年の自殺率を高めることにもなっていると考えられます。
 このような近年増加しているうつ病や神経症などの精神疾患や中高年のひきこもりなどは、その発生が予防できたり、軽症化できる疾患や状態像です。しかし、これらを実践するのは、その個人と対峙して診断・治療する「医療」だけではとても不可能です。家族や学校、職場、地域社会の理解と協力が欠かせません。特にそれらの場面において常に精神的孤立を防ぐ努力や日頃の意識付けが必要だと思います。これは他者に対しても、また自分自身に対しても、常に心掛けていなければならない事であると思います。特に仲間や家族を孤立させない、そして自分自身も孤立しないという揺らぎのない強い意識を持つことが重要です。最近の情報化社会の発展やSNSなどの普及で、ともすれば仲間や家族との本来のコミュニケーションのとりかたを勘違いしたり、不足したりしがちです。情報化社会に進むということは、便利な事ではありますが、その副作用を十分理解しながら利用する事が必要だと考えます。     


 このような事を社会全体が考えて、啓蒙していかなければならないと思いますが、簡単な事ではありません。まずは、最小の社会単位である家族間における愛情のあふれた話し合いと一致した行動が必要だと思います。そしてそれを叶えるためには、地域社会の受容的な理解と他人への思いやりが欠かせません。私は精神科医師であり精神疾患を治療する立場ですが、その疾患の発症予防策を広報していくとともに、愛他主義が育まれる社会になるよう少しでも寄与したいと思っております。皆様のご支援・ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

bottom of page