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首藤謙二院長が宮崎市郡医師会機関紙『しののめ』の巻頭言に寄稿されました。
 

【巻頭言:醫友 しののめ 宮崎市郡医師会誌 第162号 P1〜P2】

働き方改革関連法における「産業医機能強化」について

     

                                                      宮崎市郡医師会 理事 首藤謙二 

 2019年4月1日からの働き方改革法案の一部施行により労働安全衛生法が改正され「産業医機能」が強化されました。今回の改定は長時間労働やメンタルヘルス不調などで健康リスクが高くなっている労働者を見逃さないために、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにしたものです。また、産業医の独立性や中立性を高めることで、産業医が労働者一人ひとりの健康確保のためにより効果的な活動を行いやすいような環境を整備することになりました。産業医による面接指導の強化は、長時間労働やストレスを背景に起きる労働者の脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を未然に防止するためのものです。医師が面接指導で対象労働者に指導を行い、就業上の措置を適切に講じるように事業者に対して医学的な見地から意見を述べ、それを事業者が受け入れて適切な対応をとることで、労働者の健康上のリスクを低減することが出来ます。企業にとっても、専門家の知見を有効活用して、心身の病気の早期発見、未然防止に努めることは、長期的には労働者の活力が増し、企業の発展につながることになります。

 これまでの産業医の仕事は、職場巡視、長時間労働者との面接、健康診断の確認と事後面接などが中心でした。今後はこのような職務提供型の活動だけでなく、労働者の健康問題に関する個々の課題に積極的に関わり、医学の専門家として解決していくことが求められることになります。そのためには、産業医学の幅広い分野の知識獲得に努力すると共に、事業者との連携強化が欠かせないことになります。近年、メンタルヘルスの問題は増えていて、発達障害、新型うつなどにも産業医が対応しなくてはなりません。また、働き方改革実行計画においても「がんなど病気の治療と仕事の両立」「障がい者の就労」「高齢者の就業促進」など多様な施策が盛り込まれており、事業場のかかりつけ医的な立場で事業者と問題を共有して解決していく産業医が求められています。

 日本医師会による世界的に類を見ない規模での産業医養成制度によって、認定産業医を取得した医師の総数が2019年に10万人を超えました。因みに、宮崎県の認定産業医数は2019年末に492名です。これは年々増加傾向にあり、前年に比べ10名増ということです。なかでも宮崎市郡医師会においては213名という多くの認定産業医の先生方が活動されていますが、今後益々企業からの産業医就任依頼が増えることが予想されます。

 宮崎市郡医師会産業医部会では年2回(5単位分)の産業医研修会を実施しています。産業医更新には5年間で20単位の研修受講が必要ですが、毎年の当部会の研修さえ受講していただければ十分更新が可能となっております。今後とも研修会におきましては、認定産業医に必要な各部門の専門家の御講演を計画していきたいと考えております。来年度からは、研修会は建て替えられた新宮崎市郡医師会館で行われます。多くの会員の先生方の御聴講をお待ちしております。

 下記に、今回改正された働き方改革関連法における産業医の強化等についての要点を掲載いたします。

(1)産業医・産業保健機能の強化

・産業医への情報提供の強化

 今回新たに、事業者は産業医が労働者の健康管理を行う際に必要な労働時間に関する情報を提供しなければいけない、という内容が追加されました。これに伴い、事業者は労働者の健康情報の収集や保管、使用、管理にはルールを決め、適正に取り扱うことなどが求められることになりました。

・産業医の活動環境整備

 事業者は産業医から労働者の健康管理等について勧告を受けた場合には、事業所の労働者や産業医で構成する衛生委員会などに報告しなければならなくなりました。これまでは勧告を受けてもその内容を尊重しなければいけないという程度であったため、この点は法律改正によって大きく変更となった点です。

・産業医等による健康管理の強化

 これは新設の条項で、事業者は産業医等が労働者の健康相談を受け入れるための体制を整備するように努めなければならないとされています。事業者の中にはこれまでにも労働者の健康相談を意識的にやってきたところもありますが、近年の過労死問題なども踏まえ、体制を整備して産業医等による健康相談の機会をさらに増やそうという目的です。

(2)産業医による長時間労働者に対する面接指導の強化

 これまでは1か月あたり100時間以上の残業をしていた労働者が長時間労働者面接の対象でしたが、改正後は80時間以上の残業をしており、かつ疲労の蓄積が認められる者に見直されました。1か月当たり80時間以上の残業をしている労働者に対して事業者は速やかに「80時間以上の残業している」旨を通知しなくてはなりません。またこれらの情報は労働者だけでなく、産業医にも伝える必要があります。

 先日、ある事業場の職場巡視の時、担当者から報告がありました。年末に労基署の査察を受けた際、「産業医がいつ訪問しているか従業員には周知されているか。産業医に従業員が直接健康相談を行えるような体制が整備されているか。」などこれまでになかった質問をされたとのことでした。今後は、産業医も法令改正を熟知して、事業者に対してそれに伴う対応策を積極的に助言できるように準備しないといけないなと感じました。

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